8.P社の理由

そんな折P社から、

「RVSの開発は私どもではスケジュールに間に合わない為、他社に引き継ぐ事を提案いたします」

との主旨のメールが突然届きました。頭に浮かぶはてなマークと共にすぐさまP社の社長に電話をしました。ここまで来て投げだすなどと言う事は通常では考えられない事です。それについて問いただすと、

「私の技術力やマンパワーが足りない事もありますが、私の妻が癌になってしまったのです。子どもの面倒もあり、今後仕事をこなす事が出来るか分からないので、早めにお話ししました」

と言いました。奥さまの病気については、これには単に文句を並べても全く意味がない気がしました。子宮頸癌だとの事です。

ここが小さな会社に頼む事のリスクであり、大きな会社なら代理の技術者を立てる事が出来るでしょうが、基本彼一人でやって来た仕事が奥さんの大病と言う非常事態の前ではどうしようも無いのは理解せざるを得ませんでした。

しかし、私の事業はどうなるのでしょう。相手の立場は理解できるのですが、今まで経験してきた通り、開発会社を代えると言う事はまた全て一からやり直すことになるわけです。しかも期限は迫って来ています。

他の人らに相談すると、それは明らかに契約違反だろ、と言います。しかしP社とはNDAと売買契約以外の契約書は交わしていませんでした。

そうは言っても自分の事業を守る事が最大の重要事項です。私は心を鬼にして、やむなく行政書士を通して「通知書」を出しました。内容は今なら無理ない300万円で済むが、事業全体で訴えた場合は1000万は下らない事になる、と言う少し脅しの様なものでした。P社は即日300万円を振り込んで来ました。

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